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    【日本のCTO Vol.2】 株式会社Zpeer 共同創業者・CTO栫井誠一郎氏「『官』と『民』のブリッジになって日本をよくすることが私の人生目標」<後編>

    日本のCTO

    2015年07月16日

    【連載:日本のCTO】成長中の企業でCTOを務めるエンジニアたちは、どのような道のりを経てそこへたどり着き、現在は何を思考し、努力を続けているのか? この連載では活躍する日本のCTOを訪ね、キャリアの背景にあるストーリーから、CTOとしての知られざる思考やエピソードなどを伺っていきたい。

    出生率の低下により、いまや子どもの数をペットの数が超えたというペット大国、日本。しかし、動物の命を守り、健康を維持する獣医師先生は全国で1万5000人程度で国や民間企業の取り組みでカバー出来てない領域も多い。


    そこに目をつけたのが株式会社Zpeerだ。獣医師先生のコミュニティサイト『Vetpeer』を運営し、獣医師先生をはじめ動物病院向けの製品を開発しているメーカーに対し有益なサービスを次々と展開。そのプラットホームを開発するのが栫井誠一郎氏。経済産業省に6年半在職した後、28歳で退職。Webサービス企画開発事業を立ち上げ、その2年後に現企業で手腕を振るうというユニークな経歴を持つ栫井氏に官から民へ飛び出した理由、そして今の事業への思いを伺った。


    ※記事は前編、後編に分けて掲載します。本記事は<後編>です。


     

    ■経済産業省にいたことで「日本」というスケールで物事を見るようになった

    Q.後編では栫井さんのユニークな経歴からお伺いしたいと思います。東京大学の工学部を卒業した後、経済産業省に入省していますが、もともと官僚を目指していたのですか?


    東大の研究室に所属していましたが、10数人で研究をしていたのですごくクローズドな世界でした。研究に没頭するのも大好きでしたが、それ以上にもっと広い世界でたくさんの刺激にふれて成長できる場所を探していました。もともと、特に官僚自体への憧れはなかったのですが、経産省の説明会に行くと、会う人がものすごく生き生きとしていてアグレッシブで、このメンバーの中に入って仕事ができるのは非常に魅力的だと感じたのです。


    官僚というと、堅い人たちが決められたことしかしないイメージがあったので良い意味で予想外でした。経産省は、経済政策、エネルギー、通商や貿易など多くの事業分野があるのですが、様々な部署に1、2年ごとに異動しながらキャリアアップができると聞いて、成長意欲が強かった私は、ここなら自分の自己実現が叶うと感じたのです。


    Q.成長意欲が強かったのは子どもの頃から?


    幼少期から、勉強でも何でも上にいきたいという思いが強かったですね。だから経産省の人たちがガツガツ働いているのを見て、俄然やる気になりました。正直、入省時は「日本をよくしたい」とはあまり考えていなくて、自らの成長意欲を満たしたい気持ちのほうが強かったですね。


    でも、仕事に取り組むにつれて、ものの見方が自分ではなく日本というスケールで見るようになり、日本の今後の状況がリアルに見えてきてこのままではいけないと思うようになりました。官僚個人がとても優秀だったとしても、組織の中では動きづらいこともあり、もっと政治も行政もよくなるはずなのにと思うことが年々増えていったのです。


    その“もったいなさ”を感じるたびに「じゃあ、自分は日本をよくするために何ができるのだろう」と次第に思い始めたんです。この先、自分に子どもができて、我が子が成長したときに「パパ、日本に生まれて良かった」と言ってくれる社会にしたい。そう決意したときに自分の人生目標ができたのです。


     

    ■官僚から社員1名の会社を起業

    Q.官僚時代はどのような仕事に取り組んでいたのですか?


    入省して最初の配属は、経済戦略の部署で、政府の経済成長戦略や、税制改正のインパクトのシミュレーションなどを行っていました。2年目には、人材政策の部署に異動し、外国人留学生を日本の企業にマッチングするプロジェクトの立ち上げに携わりました。後に事業仕分けで廃止になりましたが、本当に良いプロジェクトだったと思います。4年目には内閣官房の情報セキュリティセンター(NISC)に出向して国全体の情報セキュリティ政策に注力。民間企業から優秀な技術者・専門家の方たちが出向にきていて、出向の立場では責任を伴うディシジョンができないということもあり、私がチームのプロジェクトリーダーのような立ち回りを担っていました。


    この経験が今のCTOの足掛かりになったと思っています。自分自身も専門的な知識を勉強するとともに、技術者たちの知識・能力をどうしたらフルに活かすことが出来るのか、その大切さを身をもって覚えました。ただ、専門家の方たちと一緒にチームとして動く中で、官僚としてのキャリアだけではまだまだ足りていない部分があると痛感。「20年後の社会を良くするために、貢献出来る人材になる」という人生目標を、自分が納得する形で達するためには、「官」も「民」も両方経験するクロスキャリアが必要と考えたのです。


    Q.それが経産省を退職した大きな理由でしょうか?


    そうです。自分の人生目標を考えた上で、30歳、40歳の自分をイメージしていくと、20代のうちにゼロからもがいて新しいことに挑戦することが必要だったため、28歳で退職して起業しました。辞める際、人事に「官僚は片道切符だから戻ることはできないけど本当にいいのか」と言われましたが迷いはありませんでしたね。


    20年後の社会に貢献出来る人材になりたい。そのためには、行政の動きを多少なりとも理解し、つながりを持ちながらも「民」の側からプレイヤーとしても貢献し、官と民が「チーム」になることをサポートする。そのような、官と民の交差点としてのビジョンをとにかく追求したいと思い、起業して力をつけなくてはいけないと本気で思いました。


    Q.起業後はどのような事業を?


    最初は「若手でもチャンスが広がりやすいWeb系の事業に飛び込んで、体当たりで経験していこう」という単純で無謀なところからスタートしました。でも、決めたからには徹底的に仕事をとっていきました。ただ、自分の知識だけでは足りないところもあったので、大学時代の仲間や知り合いなど専門的な知識を持っている人を引きいれて、勉強しながら走っていった感じです。


    基本はシステム受託業務を自分のほかに外部のシステム会社やフリーランスの方に発注して開発のプロマネ的なことをやっていました。ただ、エンジニアになるのは私のビジョンにはなく、あくまでビジネスの上流と技術者のブリッジになりたかった。技術知識と経営面の両方を語れる人材になるのが私のゴールなので。


     

    ■自分の強みを生かせ、人生をかけて取り組める仕事に出会った

    Q.自社事業から株式会社Zpeerにスライドした理由は?


    やはり受託ではなく自分でゼロから創りだす事業に取り組みたかったことが大きいです。そんなことを考えているときに、現在の共同創業者と出会い『Vetpeer』の構想案を聞いて、まさに自分が求めているものだと感じた。社会貢献ができるビジネスであり、かつ自分の強みである「官」と「民」をつなげて動物医療界をサポートし、日本をより良くできる。まさに自分の人生をかけて取り組める仕事だと思ったのです。


    Q.今後の栫井さんの目標を教えてください。


    ペット産業は今後の日本において、ますます必要とされる業界です。事実、子どもの数をペットが超えたという事実や、ペットを飼うことで人間が健康になり幸せになれるというデータもあります。ペット産業が社会に対してもたらす価値は非常に大きい。


    その中で中心となるのはペットの健康を守る獣医師先生です。私たちのサービスで獣医師先生をサポートすることが業界全体の貢献だと考えています。ただ、『Vetpeer』は私たちの資産ではなく、動物医療業界のみなさんで作り上げた共通の資産。だからこそ、『Vetpeer』に関わってくださるみなさんへの感謝の気持ちを忘れずに今後も魅力あるサービスを考案していきたいですね。


    そしてゆくゆくは「官」と「民」のブリッジとなって国に働きかけ、よりよい環境を作り上げたいと考えています。


     

    ■技術と経営のバランスがとれる人こそがCTOにふさわしい

    Q.栫井さんが考える優秀なCTOとは?


    大きく2つのタイプがあると思います。1つ目は技術に特化した人。2つ目はビジネスとのシナジーを生むビジョンを持っている人。私は明らかに後者です。前者として素晴らしい方ももちろんいらっしゃると思いますが、私たちの会社のようにWebサービスが経営の命綱になっている企業では、CTOが技術に特化しているだけでは厳しいと感じます。経営者から「こんなシステムが必要だから考えて」と言われてその範囲内で素晴らしいものを仕上げるだけではダメで、今後の事業展開を見据えたサービスを一緒に提案し、考えられる。それがWebサービスが主軸となる企業のCTOには必要ではないでしょうか。


    CEOやCOOと二人三脚で走れて、技術と経営のバランスを両立する素養をもつ人がシステムのトップにいるべきですね。


    Q.そのうえで一緒に働きたいエンジニアとは?


    日々、状況が変わっていくWeb業界の中で必要とされるエンジニアは常に先の展開を察して共有し、場合によっては提案してくれる人ですね。やはり下請け感覚で働いている人とは一緒に仕事をしたくない。とりあえずこなしているのではなく、ビジネスにコミットしてくれることが絶対条件だと思います。


    「コードを誰よりも早く書ける」などよりも過去にプロダクトを作って成功や失敗体験を語れる人のほうが信頼できますし。


    事実、現在長くお付き合いさせてもらっているエンジニアのひとりは地方にお住まいの方ですが「共にビジネスを成功させよう」という気持ちが強く提案もどんどんしてくれる。距離よりも、信頼関係の強さのほうが優っています。


    Q.エンジニアを派遣するITプロパートナーズのようなサービスをどう思いますか?


    企業側とエンジニア側、両方にメリットがあるサービスだと思いますね。企業側にとってはフルタイムで雇用するほどでもないサービスを展開したいときにとても役立ちますし、エンジニア側はさまざまなプロダクトに関わりたいとか、自主事業も行いたいなど自分のニーズにあわせて選ぶことができる。それぞれの課題を解決できるサービスですね。


    ただ、企業側の懸念としては週2、3日という中でどれだけ密着感を持っていただけるかということ。何かあったときにすぐに動いてもらえる対応力やビジネスの相談ができるパートナーシップを築けるかが重要だと思います。このサービスを利用するには使う側も使いこなす側もそれなりに適性をもった選ばれた人でないといけないかもしれませんね。


     


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