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    【日本のCTO vol.1】 株式会社エウレカ 石橋準也氏「考えた技術的戦略がぴたりとハマった瞬間が、一番楽しい」<後編>

    日本のCTO

    2015年05月07日

    【連載:日本のCTO】成長中の企業でCTOを務めるエンジニアたちは、どのような道のりを経てそこへたどり着き、現在は何を思考し、努力を続けているのか? この連載では活躍する日本のCTOを訪ね、キャリアの背景にあるストーリーから、CTOとしての知られざる思考やエピソードなどを伺っていきたい。
    第1弾は、株式会社エウレカのCTOを務める石橋準也氏。27歳にして約10年のエンジニア歴を持つ氏は、200万人が利用する国内最大級の恋愛・結婚マッチングサービス「pairs」、同じく200万人が利用するカップル専用アプリ「Couples」を運営する同社の最高技術責任者、かつ執行役員として、技術から採用まで横断的な視点で戦略を練る。そんな石橋氏に、大学を中退してエンジニアとしての道を選んだという学生時代から現在にいたるストーリー、そしてCTOとしての技術的戦略に対する考え方を伺った。

     

    ※記事は前編中編、後編の3回に分けて掲載します。本記事は<後編>です。

     
    ■優秀なエンジニアのスキルセットとは何かを意識すること
    Q.石橋さんが考える「一緒に働きたいエンジニア」ってどんな人でしょう?

    根本的なところでいうと、やっぱりコンピューターサイエンスの基礎があり、ソフトウェア開発工学の設計法に知見があり、しっかり理解しているような人。つまり基礎がしっかりできている人と働きたいと思っています。
    基礎があり技術が好きであれば、今はiOSしかできないとか、PHPしかできないというエンジニアの方でも、どんな技術でもすばやくキャッチアップし、ある程度深いところまですぐにできるようになると思っているので。

    僕自身も建築学科出身でしたし、昔はコンピューターサイエンスなどの基礎は全然ありませんでした。そんななか、世の中の優れているエンジニアと自分の何が違うのか、と考えるようになりました。その過程でそもそもエンジニアにとって必要なスキルセットとは何なのかを考え、そのスキルセットを自分なりに体系化していって、自分にないスキルをそれぞれつぶしていったという経緯があります。その中にはもちろん基礎の部分も含まれていました。

    スキルセットを意識して、それぞれ自分に足りない部分をつぶしていこうという意識はすごく重要なことだと思います。ソフトウェアエンジニアリングに必要な知識やスキルを体系的にまとめた「SWEBOK(スウェボック)」などを参考にしてもいいかもしれないですね。

    エウレカでも最近、そういったスキルセットを僕らシニア層のエンジニアで体系化して、それぞれに対応する書籍や資格を一覧にまとめ、ジュニアクラスのエンジニアの学習を支援するという取り組みを始めています。本も70冊くらい買って。
    (写真:会社には専門書籍がずらり。書籍購入補助制度もあるそうです)

    インターンでそのまま入ってきているようなジュニアクラスのエンジニアたちは、開発力自体は高いのですが、本当に難しい局面では基礎がなくストップしてしまう。新しい技術も深い所まではなかなか入っていけない。表面上の理解だけだとそういう事態に陥るというのを見てきて、この取り組みを始めました。

    そもそも基礎ができないと、ミドル〜シニア層のエンジニアにはなれないと思っています。10年やってもできない人はできないと言われるような世界なので。

     
    ■今後注目が高まるのは、クラウドインフラエンジニア
    Q.これから市場価値の高まってくるエンジニアとは…?

    あくまで個人的な感覚になりますが、日本の市場価値で言うなら、年収500〜700万くらいだと基礎ができていて3〜10年程度の経験のあるミドル層〜シニア層のエンジニアであることは絶対的な条件だと思っています。ただそこからはなかなか現場のエンジニアリングだけをしていると難しいと思っています。それこそGoogleにでも余裕で入れるような専門性の高いエンジニアとかじゃないと。ではそれ以外で本当に市場価値が高い、つまり年収が800を超えてくる層という意味だと、マネジメントスキルまたはビジネスセンスが高い、そのいずれかが必要かなと思っています。

    また職種で言えば、今後、市場価値が高くなるだろうなと思っているのは、クラウドインフラエンジニア。つまりクラウド環境に適合したインフラエンジニアが重要かなと思っています。

    今のインフラエンジニアはキッティングやラッキング、各種NW機器の設定などを業務内容として求められることもあります。ですがIaaSが今後ますます浸透していくにあたって、それらはすでに用意されている前提で、サーバのハードウェアの作りやOSに対してどれだけ詳しくなるか、データーベースに対してどれだけ詳しくなるか。クラウド環境特有の機能理解や障害等の事象を経験値としてどれだけ持っているか。それらを備えたクラウドインフラエンジニアは、市場価値が高くなっていくのではと考えています。

    もうひとつ求められてくると考えているのが、エウレカでも推進しているハイブリッドエンジニアです。つまり、インフラかアプリかですね。そのいずれかで、今の時代・環境に適合しているというのが重要なのではないかと考えています。

    でも、本当はわからないですよね(笑)。僕は今27歳ですが、10年近くエンジニアをやってきて、その間だけでも、時代の急激な移り変わりを見ているので、この先も大きな変化はいくらでもあり得るだろうと考えています。

    クラウドという言葉が出たのは、僕がちょうどエンジニアになった年。Googleのエリック・シュミットがある講演で「ブラウザの種類も、アクセス手段も、パソコンかマックか、携帯電話かも無関係です。“雲(クラウド)”のような、巨大なインターネットにアクセスすれば、その利益、恵みの雨を受けられる時代になっています」ということを言って。さらにその後、当時のサンマイクロ・システムズCTOが「世界に“コンピュータ”は5つあれば足りる」と発言していて、その5つの中にGoogleやAmazonも例として挙げられていたんですけど。

    そのころは、“そんなわけない”という感じで世間でもバズワード扱いされていた節もありましたが、いま現実に世界がそこに近づいているのを見ていると、あながち、今バズワード扱いされているキーワードや情報もバカにできない。

    そういう意味では、Go言語もそのひとつの潮流だと思っていて。一時期、Rails(Ruby on Rails)ができると年収が高いというエンジニアのちょっとしたバブルのようなものがありましたが、僕はそれがGoで再現される可能性があるなと思っています。

    最新技術にいち早く切り込んでいくことで、どんどん自分の市場価値を高めていくというのはあると思います。どの技術にコミットするのかっていうのは結構、賭けだと思っているのですが。ただ優れているだけではなくて技術としてのマーケティングやユーザビリティなども見て、何が普及する技術なのかを見極める力も必要ですよね。
    (図:pairsの現在のインフラ構成図)

    Q.ちなみに、ITプロとしてエウレカにジョインされている方々についての印象は?

    人材の質という意味では、まず技術力にブレがないなと感じますね。紹介される方すべて、技術力にブレがなくて…いい意味で上ブレはあるんですけれども。一定以上のレベルに達しているエンジニアという印象があります。

    あとエウレカの傾向として、そこまで仕様をがっちり固めずに、「よきにはからって」というスタイルがあるのですが、そういう開発に対しても柔軟に対応していただけるイメージ。だからこちらからの要望というのはあまりなくて、強いていうなら週3を週4、週5に増やして…みたいな(笑)。

     
    ■注目しているベンチャーはメルカリとSlack
    (写真:集中したい時はカウンタースペースで作業)

    Q.最近注目しているベンチャー企業は?

    色々ありますがいくつか例示すると、メルカリさんと、チャットコミュニケーションのSlackさん。

    メルカリさんは、やはり1年半で1000万DLという尋常じゃない成長スピードと、それがユーザーベースの規模だけじゃなくて実際の取引数とそれに伴う売上・利益もしっかり立っているのがビジネスモデルとしてすごく印象的です。

    またエンジニアリング面でも面白いと感じています。実際僕らが採用したいなと思っていた優秀なエンジニアさんたちもどんどんジョインしていくのを見ていますし。先日あるTechイベントでメルカリさんの講演を聞いて。そのなかで、AWSとさくらの両方を使っていて、さくらではioDriveを使っていると、と。普通AWSを使っていると、AWSの中だけで完結してしまいがちですが、既成の方法論にとらわれずうまく組み合わせて課題を打破していくというのが、エンジニアリング的に面白いなと感じましたね。

    Q.Slackさんに注目している背景は?

    Slackさんは、プロダクトの力であれだけ全世界に広まっているというところ。マーケットインで求められるプロダクトを精度高く作り上げることによる広まり、つまりプロダクトの力がモノを言う時代であるということを象徴していると思います。

    Web, Macネイティブアプリ、スマホネイティブアプリなどの豊富なフロントエンド、開かれた外部サービスとの連携、秀逸なUI/UXなど、プロダクトの力を随所に感じます。BtoBで50万DAUというのもすごいと思います。

    それ以外にも、日本にあるベンチャー、スタートアップの成長期にある会社はやはりどこも面白いとは思っています。実際に各社のCTOの方やエンジニアの方とお会いすると皆さんすごく優秀ですし、本当にさまざまなことを考えて日々お仕事されているなというのを感じます。

     
    ■月に1度は本屋に「メインストリーム」を見に行く
    (写真:カウンタースペースの夜はこんな感じです)

    Q.ちなみに、プライベートタイムの過ごし方は…?

    基本的にはほとんど仕事ですね。あと最近は、朝走るようにしています。これは単純にダイエットのためにはじめたのですが、早起きして走ったりすると、 “俺やった感”みたいなのがあって(笑)。そのまま出社すると気分がよくて仕事もはかどるので、ここ1ヵ月くらいは続けています。

    以前は4時、5時に起きて朝活していた時期もあります。今は7時に起きて、走って、9時に出社。帰りは22、23時くらいですかね。本当はもう少し早く帰って勉強しなくてはと思うのですが、これもバランスの問題で。その時間分、勉強をするより仕事をして短期的に価値を生み出さなければいけないと考えてのことです。

    あと月1回は絶対、本屋へ行くようにしています。月並みですがジュンク堂池袋書店にはよく行きますね。僕らは日々いろいろな情報が流れてくる環境にいて、何がメインストリームなのかわからなくなるときがあると思うんですよ。

    本屋へ行くと、メインストリームが整理されている。わざわざ出版されているという時点で、ある程度需要があるということですし。メインストリームが何かというのは常に意識するようにしています。

     

    <おわり>

     

    —以上、株式会社エウレカCTO、石橋準也氏のインタビューを全3回にわたってお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか。

    CTOとして多忙な日々を送るなかでも努力を怠らず、常に率先して自ら学び続け、それを楽しんでいる。石橋さんからはそんなオーラが終始漂っていたのがとても印象的でした。

    このCTOのこんな話が聞きたい!というリクエストがありましたら、ぜひ編集部まで。可能な限りお応えしていけるよう、検討させていただきます。

    edited by editor
    ITPRO