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    【日本のCTO vol.1】株式会社エウレカ 石橋準也氏「考えた技術的戦略がぴたりとハマった瞬間が、一番楽しい」<中編>

    日本のCTO

    2015年04月30日

    【連載:日本のCTO】成長中の企業でCTOを務めるエンジニアたちは、どのような道のりを経てそこへたどり着き、現在は何を思考し、努力を続けているのか? この連載では活躍する日本のCTOを訪ね、キャリアの背景にあるストーリーから、CTOとしての知られざる思考やエピソードなどを伺っていきたい。
    第1弾は、株式会社エウレカのCTOを務める石橋準也氏。27歳にして約10年のエンジニア歴を持つ氏は、200万人が利用する国内最大級の恋愛・結婚マッチングサービス「pairs」、同じく200万人が利用するカップル専用アプリ「Couples」を運営する同社の最高技術責任者、かつ執行役員として、技術から採用まで横断的な視点で戦略を練る。そんな石橋氏に、大学を中退してエンジニアとしての道を選んだという学生時代から現在にいたるストーリー、そしてCTOとしての技術的戦略に対する考え方を伺った。

    ※記事は前編、中編、後編の3回に分けて掲載します。本記事は<中編>です。

     
    ■CTOになって見えてきた世界と、磨き直したこと
    Q.CTOという立場になってから変わったと思うことは…?

    CTOになってからは、技術的戦略を考えたり、採用に関わったりすることがとても増えたと感じています。以前は事業ありきで、その事業に対して技術的に必要なことをやっているという感じでしたが、今は徐々に会社全体としての技術的戦略を考え、その戦略をもとにエンジニアの採用を考えていくフェーズに移行しています。

    採用って、短い時間でどれだけお互いのことを知れるかの一発勝負じゃないですか。それまでは口頭で説明するだけだった会社概要も、プレゼンシートを用意して、30分くらいずっとプレゼンするようにして。それで一方通行になっては困るので、そのあと30分は質問タイムをとるなどして、ひとつの面談で1時間半や2時間かけたりもするようになりました。

    あとは、やはり自分が技術のトップとして見られるわけなので、そこは意識が変わりましたね。もちろんいろいろな技術分野があるなかで、全部において自分がトップというつもりはないですが、それでも総合的にトップでなければいけないとは思っていて。これまで以上に、技術的な情報収集や勉強の機会自体も増やしました。

    Q.具体的にはどのような分野を?

    さまざまな技術の原典・古典と言われるような本を読んでみるとか、昔勉強していたアルゴリズムをもう一度学び直しました。つまりエンジニアとしてのベース、コンピューターサイエンスの部分を磨き直したというのと、最新の技術を網羅的に把握するようにした、この2点かなと思います。

    Q.忙しい中で、勉強時間はどう確保されているのですか?

    そうですね…土曜日は会社の仕事をしていることが多いのですが、週に1回、日曜日は必ず休むようにしています。その時間を勉強に充てていますね。あとは僕、半身浴が好きなのですが(笑)、その半身浴のタイミングで、読書することもあります。時間は有限なので効率的になんとか勉強しようとはしています。

     
    ■技術的戦略がぴたりとハマる瞬間が一番楽しい
    Q.石橋さんの考える、CTOならではの醍醐味、って何でしょう。

    CTOというポジションで味わえる醍醐味は、考えた技術的戦略がぴたりとハマった瞬間。「あのときこの戦略を採用して成功だったな」って思う瞬間が、一番楽しいですね。戦略って、戦術に落としこんで実行していかなければならないので、すぐには結果が出ない。それが例えば3ヵ月後とかに、成果が現れはじめて…というのは、やっぱりすごく面白いです。

    今まで組織設計や技術の採用など、CTOになってからチャレンジングなこともしてきたのですが、今のところはどれもうまくワークして、狙い通りの結果を出せている。それと、自分が組織・事業に与えられるインパクトが大きくなっているというのは単純にすごく幸せなことだなと感じています。

    Q.技術的戦略は、皆で話し合って決める、それともひとりで考える…?

    戦略を考える段階になると、ひとりです。それまでに社内外のさまざまな人と話しながら、ああした方がいい、こうした方がいいと意見交換はしています。そのなかで、何が今の会社に一番フィットするのか、半年後や一年後の事業的な戦略も見据えてどうしていくべきか、ひとりで戦略を練る。

    で、ある日急に僕がその戦略を話すと「また石橋が何か言い出したよ」みたいな感じになって(笑)、でも、何度も言っているとだんだん会社として当たり前のような方向性になってくる…っていうのはすごく楽しいですね。

     
    ■Go言語で「pairs」のサーバーサイドをフルスクラッチ開発
    Q.技術的戦略について、具体的な内容をぜひ伺いたいです。

    CTOになってから採用した技術的戦略のなかで、現在も進行中の大きいプロジェクトが2つあります。そのひとつが、Go言語で「pairs」のサーバーサイドをフルスクラッチ開発するということ。もうひとつが、全エンジニアのハイブリッドエンジニア化です。

    Go言語をWebに採用した例はまだあまりないので、「pairs」がGoでフルスクラッチ開発・運用すれば、Webの採用事例としては国内で最大規模の事例になります。

    これは社運をかけている側面もあるので、なんとしてでも成功させなければならない。この場合の成功の定義は、技術的負債が完全にクリアになり、開発スピードが上がりインフラのスケーラビリティも担保できている。かつそのときにGo言語の今の流行がメインストリームになり今以上に採用に優位に働いている、という状態。それがもし達成できたなら、ぴたりと戦略がはまった瞬間になるなと考えています。

    いろんな人にクレイジーだって言われますね。「この規模で使うんですか?」みたいな。社内でも、当初は「本気ですか?」と疑われたりもしましたが、めげずに布教活動をして(笑)。何度も言っていると、だんだんみんな理解してきてくれる、と。

     
    ■社内のエンジニアが、誇りを持って働ける環境を提供する
    Q.Go言語の採用に踏み切ろうという判断の、戦略的背景とは…?

    これはエウレカにいる僕がコンプレックスに思っていることなのですが、エウレカはUI/UXが得意とか、マーケティングが得意な会社というイメージを持たれている方が多いと感じています。それはとてもありがたいことですし、事実そうだと僕も思います。一方で、現時点では技術面についてはあまりフィーチャーされていないというところがあるとも感じています。これだけのサービス規模を支える開発陣がどういうレベルかは、わかる人にはわかっても、世間一般にはまだまだ伝わっていない。
    サービスが大きくなっていくのにそういう状態だと、エンジニアの採用面ではいつまでたっても不利ですし、何より社内のエンジニアも誇りをもって働けないじゃないですか。ということで、ここらで何か打開策を打たなくては…と思っていたなかでの、Go言語の選択です。

    Go言語を採用しているとなると、やっぱり「おっ」ってザワついたりする。今は外部の勉強会にも出かけていって、積極的に言うようにしていますね。

    もちろんそれがすべてではなく、大前提としてpairsのサーバサイドが今後の成長を考えたときにフルスクラッチ開発する必要を迫られていたということや、Go言語の技術的な優位性を魅力に思ってのことではありますが。

    Q.それくらい、インパクトのあることを仕掛けなければいけないと。

    僕が戦略を考えるときにベースにしているのは、ユーザーから求められること(サービスの品質など)と社内から求められること(開発スピードの担保など)、その両面で、半年後に求められている水準を、このペースで進めていって達成できるのかと言う視点。

    それが達成できないのであれば何かしら策を打たなければいけなくて、その策のインパクトが小さければ結局、達成できない。これだけのスピードで成長している組織やサービスにさらなる成長インパクトを与えるには、インパクトの大きな施策を打たねばなりません。

     
    ■ハイブリッドエンジニアがもたらす、新しい開発スタイル
    Q.技術的戦略のもうひとつが、「エウレカ全社員のハイブリッドエンジニア化」ということですが…。

    ハイブリッドエンジニアというのは、Webのフロントエンド、iOS、Android、サーバーサイドを全部ひとりでできるエンジニア。つまり、アプリケーション開発を全部ひとりで担えるエンジニアと定義しています。
    (図:ハイブリッドエンジニアの概念図)

    ひとつの施策に対してiOS、Android、Web、場合によってはWebとは別にサーバサイド担当、と3、4人エンジニアがいる状態は、膨大なコミュニケーションコストが生じます。そしてそれだけコミュニケーションコストを支払ってでも、結果的にどこかのタイミングでコミュニケーションロスが発生し、それが最終的にユーザーの不利益につながる、というのを繰り返し見てきたので、ここを一元化することで効率の良さを追求したいと考えています。

    実際ひとりですべてできるエンジニアも当時からいて、それを見ていると圧倒的にスピードが速いし、クオリティも高い。ならば全員がそうなるようにしていこうと。

    Q.「全社員ハイブリッド化」に向けて取り組んだことは?

    最初に行ったのは、まず僕自身がハイブリッドエンジニアになることでした。言い出した当初は「また石橋さんが何か言っているよ」と。「そもそもあなたiOSできないし、Androidできないじゃん」と言う状態だったので(笑)。ならばと僕自身が2週間ほどでiOSとAndroidを覚えて、実際にストアにアプリをリリースしました。別にそんなに無茶なこと言っているわけじゃないんだよというのを見せて。 

    それから、開発合宿を行いました。もともとサーバーサイドをやっていたエンジニアと、フロントエンドのiOS、Androidをやっていた人をスイッチさせて。APIをネイティブエンジニアがつくり、サーバーサイドエンジニアがネイティブアプリを作って。お互いどんなことをやっているのかを理解し、チームでひとつのアプリを作りあげるということをやりましたね。
    (写真:開発合宿の様子)

    そのなかで覚えの早いメンバーからどんどんハイブリッドエンジニアに変えていって、いまようやく割合としては1/3くらい。でも、まだまだですね。変えやすい人から変えていっているので、ここからが難しい。

    でもこれが成功すると、さっき言っていた「小さなチーム」というのがさらに小さくできる。ひとつのチームにひとりのエンジニアですむようになり、コミュニケーションコスト・コミュニケーションロスがなくなり、開発スピードも品質もあがる。個人の責任と意識も高まる。新しい開発スタイルになるのではと思っています。

     

    <後編につづく>

     

    —以上、中編では、CTOというポジションに立ってから見えてきた世界、技術的戦略について伺いました。後編では、そんな石橋氏が考える、これから求められるエンジニアやスキル、注目のベンチャーなどについて伺います。

    edited by editor
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